美優が登場してからずっと緊迫した雰囲気でしたが、今回ちょっと落ち着きを取り戻しました。
ルブリスがカッコ良い。
前回の115話はこちら
捨てられた皇妃【第116話】
ルブリスの機転
美優を次期皇后に、アリスティアを次期皇妃に迎えるという皇帝陛下の決定。
ルブリスはこれに否を唱えました。
今まで臣下のように陛下に従ってきた皇太子が、公の場で陛下が決定したことに反対したことに誰もが驚いています。
しかし、同意できないと言った理由は感情的なものではなく、考えがあってのものでした。
ルブリスは、美優を養女に迎えたゼナ公爵に問います。
ここでルブリスが美優を次期皇后に迎えることに反対したら、次期皇妃で妥協しその見返りとしてアリスティアより先に美優を皇宮に住まわせる条件を持ちかけるつもりなのではないかと。
ゼナ公爵は、アリスティアより先に美優を皇宮に入れ、ルブリスの補佐としてつけることで優位に立とうと考えたようです。
アリスティアが成人するまであと一年。
つまりアリスティアがルブリスの婚約者のままなら、一年後には皇宮に上がることになるようです。
その前に美優を皇宮に入れると言うことは、美優が皇后の任務を遂行することになる。
次期皇后として教育を受けてきたアリスティアと違い、素質があるかどうかもわからない美優に務まるわけがないということですね。
ゼナ公爵は、なんとかルブリスの考えを変えさせようとしますが、ルブリスは政務は一人で問題なくこなせていると跳ね除けます。
美優は眉をひそめ悔しそうな顔をしています。
ゼナ公爵の目論見は、当然美優も納得済みだったということ。
前世と違い、今のルブリスは美優にまったく関心がないように窺えます。
この作戦でアリスティアより優位になり、いずれ地位もルブリスの心も手に入れるつもりだったのでしょう。
錯綜する思い
ではどうしたいのだ?と、陛下がルブリスに問います。
ルブリスの考えは、一年後のアリスティアが成人する日に答えを出すというものでした。
これは当初の予定どおり。
アリスティアがお告げを受けた後、陛下の前で皇后にはなりたくないと宣言した時に、約束したこと。
だから、あと一年待ってくださいと。
その一年の間に美優に素質があるかどうかも確認できるからと、貴族派の反対も見事に抑え込みました。
ゼナ公爵と美優は、苦々しい顔でルブリスを見ています。
今まで一度も陛下の決定に逆らったことがないから、今回もうまく丸め込めると安易に考えていたのでしょうか。
このルブリスの判断には、皇帝派のラス公爵もベリータ公爵も驚いていました。
しかし、これで貴族派に先手を打たれることはないと安堵もしているようです。
ただ、これで美優にルブリスの補佐としての素質があることが証明されれば、美優が次期皇后になる可能性も出てくる。
美優と同じ線上に並べるのは、同じ神に選ばれし子であるアリスティアのみ。
ラス公爵は、アリスティアを皇室に嫁がせる覚悟をした方が良さそうだとケイルアンに話しかけます。
しかし、ケイルアンはアリスティアの意志を尊重したいから、それには同意できないときっぱりと言うのです。
誰もがそれぞれの考えや思いを胸に秘めて、今回の会議は終わりを迎えました。
一年後への誓い
力が抜けたように、一人で回廊のソファに座り込むアリスティア。
そこにルブリスが近寄り、アリスティアの肩に手を掛けて立たせ連れ出します。
ルブリスがアリスティアの手を取り連れ出すところを、じっと美優は見つめていました。
ルブリスに手を引かれ庭園のベンチに座ったアリスティアは、自分の無力さに茫然自失としていました。
そのまま深い海に沈み込むように意識を手放しかけた瞬間に、アリスティアはハッと意識を取り戻しました。
アリスティア!と強く呼ぶ声と、すまないと詫びながら抱きしめてきたルブリスによって。
ルブリスは、アリスティアが皇室に入る気がないことを知っていながら、決定を先延ばしにしたことをアリスティアに謝ってきたのです。
アリスティアの意志を尊重したかったのに、なんの力にもなれなかったと。
今の僕にはあれが限界だったのだと。
アリスティアにはもちろんわかっています。
むしろ、ルブリスがアリスティアのために時間を稼いでくれたということを。
そしてルブリスは誓いました。
一年後もアリスティアの気持ちに変わりがなければ、アリスティアの選択に従う。
自分の名にかけ、アリスティアには何も強要しないと。
だから、どうかすべてを諦めたりしないでくれと。
ルブリスめちゃめちゃいい男じゃないですか。
アリスティアも気持ちが弱っているのもあるし、ここまで大切にされたら気持ちが揺らぎそう。
ますますルブリスを否定できなくなりそうですね。
ふたりきりの時間
ルブリスの言葉に泣いてしまったアリスティア。
ひとしきり泣いた後は、二人で食事を取ることに。
野菜しか食べないアリスティアに、肉も食べたほうがいいと切り分けてくれるルブリス。
普段ルブリスが食べることのない食材が並べられた料理は、アリスティアの口に合ったようです。
私のために用意してくれたの?と思いながら、目を向けた先には優しく見守ってくれるルブリスの微笑み。
食後にバルコニーに出て夕涼みをしていると、ルブリスがアリスティアの母について語り初めました。
ずっと秘密にしてきたけれど、ジェレミアに子どもの頃にしかられたことがあるのだと。
・・・・・
次回は、昔話の続きからですね。
ルブリスとアリスティアがこんなに長い時間二人でいるのなんて初めてではないでしょうか。
しかも、かなり寛いだ様子で。
ここのところずっとハラハラする展開だったので、今回の後半は久々に落ち着いて二人の微妙な距離感を楽しめました。
本当に今のルブリスはアリスティア一筋で、美優には目もくれないようですね。
美優といえば、小説の外伝でアリスティアの処刑後のルブリスと美優の関係が語られています。
ルブリスは皇后としての政務がまともにできない美優に苛立ちを覚え、アリスティアだったらと自分が処刑した女のことを頻繁に思い出すように。
そしてひっそりと残されていたアリスティアが行ってきた政務の痕跡や、ルブリスの好みを徹底的に研究した料理のレシピを知り、アリスティアとはどんな人だったのかと思いを馳せるのです。
美優はことあるごとにルブリスがアリスティアと比較してくることに苛立ち、もういないアリスティアに対して恨みを募らせていきます。
美優がどのタイミングで転生したのかはわかりませんが、そんな恨みや憤りを持ったままの転生はさぞ辛かっただろうと思います。
元の世界に戻れて、でもまたあの世界に飛ばされてしまうかもしれないと思いながら今まで生きてきたのだとしたら。
この世界に美優が現れて、その恨み辛みを晴らそうとしているのか、今度はうまく立ち回って幸せになってやると思っているのか、その真意は今のところわかっていません。
美優がどんな感情で何を考えているのか、今後明らかになるのでしょうか。
決定が一年後に延びたからといっても一年間何もないわけはないので、また色々と策略が張り巡らされるのではないかと思いますが、今後アリスティアがどう立ち向かっていくのか楽しみです。